はじめに
遺言書を作成しても、それを実際に執行する人がいなければ、相続手続きは進みません。
その役割を担うのが「遺言執行者」です。今回は、遺言執行者の役割と選び方を、実際の事例を交えながら解説します。
遺言執行者とは?
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために相続手続きを進める人です。
民法第1006条に基づき、遺言書で指定することができ、民法第1012条に基づき、相続人の代理人ではなく独立した立場で動きます。
参照:e GOV 法令検索 「民法」第1006条~
事例:
70代の男性が「自宅を妻に、預金を子どもに分ける」と遺言を残しました。遺言執行者に妻を指定していたため、妻は自宅の名義変更をスムーズに進められました。一方で預金の分配は銀行とのやり取りが必要でしたが、遺言執行者としての権限で手続きが可能になり、子どもたちの同意を逐一取り付ける必要はありませんでした。
遺言執行者の役割
遺言執行者は、具体的に次のような仕事を担います。
- 財産の名義変更
例:不動産の登記を相続人の名義に変更する。
→ 遺言執行者がいる場合、相続人全員の同意書を集めなくても登記が可能。 - 遺贈の実行
例:遺言で「地元のNPO法人に寄付する」と書かれていた場合、遺言執行者が法人に財産を移転する。
→ 相続人が反対しても、遺言執行者の権限で実行できる。 - 相続人への通知・報告
例:遺言執行者が「不動産の登記を完了しました」「預金を分配しました」と記録を残し、相続人に報告する。
→ 透明性を確保することで、後のトラブルを防止。
遺言執行者の選び方
誰を遺言執行者にするかは非常に重要です。
事例①:親族を選んだケース
ある家庭では、長男を遺言執行者に指定しました。しかし、他の兄弟から「長男が自分に有利に進めているのでは」と不満が出て、家庭裁判所に調停を申し立てられました。
→ 信頼関係が強ければ親族でも良いが、利害関係がある場合はトラブルの火種になることも。
※トラブルが発生しそうなときは、お近くの弁護士、または法テラスにご相談を。
事例②:専門家を選んだケース
不動産や株式など財産が複雑な家庭では、行政書士を遺言執行者に指定しました。専門家が中立的に手続きを進めたことで、相続人同士の不満が出ず、スムーズに完了しました。
→ 財産が多い場合や相続人が複数いる場合は、専門家を選ぶ方が安心。
よくあるトラブルと防止策
- 執行者が高齢で対応できない
→ 予備的執行者を指定しておくと安心。 - 相続人が執行者の行為に不満を持つ
→ 定期的に報告書を作成し、透明性を確保する。 - 専門知識が不足している
→ 行政書士や弁護士を選任することで防止可能。
行政書士の支援ポイント
行政書士は、遺言文案作成時に「執行者を誰にするか」のアドバイスが可能です。
また、執行者に選任された場合は、戸籍収集・協議書確認・金融機関手続きなどを代行します。
まとめ
- 遺言執行者は、遺言の内容を実現するための重要な存在。
- 親族を選ぶ場合は信頼関係がカギ、専門家を選ぶ場合は安心感が強い。
- トラブル防止には、透明性のある報告や予備的執行者の指定が有効。
- 行政書士は、執行者の事務をサポートし、円滑な相続手続きを支援可能。
次回予告
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次回は「相続人以外への遺贈|友人・団体に財産を残す方法と注意点」を解説します。遺言で可能な寄付や遺贈の仕組みを紹介します。
