はじめに
前回は、借金がある相続で「相続放棄」と「限定承認」のどちらを選ぶべきかを解説しました。
前回の記事はこちら
今回はその続編として、限定承認を選んだ場合に必要となる具体的な手続きについて、実務の流れと注意点をわかりやすく紹介します。
限定承認はメリットが大きい一方で、手続きが複雑で専門知識が求められます。
この記事では、家庭裁判所への申立てから財産目録の作成まで、限定承認の手続きの流れを整理します。
目次
限定承認とは?(簡単なおさらい)
限定承認は、
「プラスの財産の範囲で借金を返済し、残った財産があれば相続できる」
という制度です。
相続放棄と違い、財産を残しつつ借金を整理できる可能性があります。
限定承認の手続きの流れ
限定承認は、相続放棄よりも手続きが多く、家庭裁判所への申立てが必須です。
① 相続人全員の合意
限定承認は、相続人全員が共同で申立てを行う必要があります。
事例:
長男は限定承認を希望したが、次男が「面倒だから放棄したい」と反対し、限定承認ができなかったケース。
→ 相続人間の調整が最初のハードルになります。
② 家庭裁判所への申立て
申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
必要書類
- 限定承認申述書
- 被相続人の戸籍・除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 財産目録
- 収入印紙・郵便切手
申立て期限は 相続開始を知った日から3か月以内 が原則です。
③ 財産目録の作成
限定承認の最重要ポイントが「財産目録」です。
プラスの財産もマイナスの財産も、すべて正確に記載する必要があります。
■ 記載する内容
- 預貯金
- 不動産
- 車・家財
- 株式・投資信託
- 生命保険(解約返戻金)
- 借金・ローン
- 連帯保証債務
事例:
父が仮想通貨を保有していたが、家族が気づかず財産目録に記載しなかったため、後にトラブルになったケース。
→ デジタル資産の見落としが増えています。
④ 官報公告と債権者への通知
家庭裁判所が限定承認を受理すると、
- 官報公告
- 債権者への個別通知
が必要になります。
これにより、債権者は「借金の請求」を申し出ることができます。
⑤ 財産の換価と弁済
財産目録に記載した財産を売却し、借金の返済に充てます。
事例:
不動産を売却して借金を返済し、残った金額を相続人が受け取れたケース。
→ 財産が多い場合、限定承認のメリットが大きくなります。
⑥ 残余財産の相続
借金を返済しても財産が残った場合、その残りを相続できます。
これが限定承認の最大のメリットです。
限定承認の注意点
- 相続人全員の合意が必要
- 財産目録の作成が非常に重要
- 官報公告など手続きが多い
- 専門家のサポートがあると安心
行政書士の支援ポイント
- 財産調査のサポート
- 財産目録の作成支援
- 家庭裁判所への申立書類の作成(申立て自体は依頼者本人または弁護士が代理)
- 税理士・弁護士と連携し、複雑な案件にも対応
まとめ
- 限定承認は「財産を残しつつ借金を整理できる」制度
- ただし手続きが複雑で、財産目録の作成が最重要
- 相続人全員の合意が必要で、期限にも注意
- 限定承認についての裁判所のサイトはこちらをご覧ください
- 行政書士は調査から申立てまで一貫してサポート可能
次回予告
弊所の相続のお手続きに関してはこちらをご覧ください。
お問い合わせはこちらまで、お気軽にどうぞ。
次回は「遺言書に書けること・書けないこと|「有効・無効」の境界線」を予定しています。
