相続手続きでは、相続人全員で話し合って財産の分け方を決める場面があります。
ところが、相続人の中に認知症の方がいる場合、手続きは一気に慎重になります。
「家族だから代わりに決めても大丈夫では?」
「本人はよく分かっていないけれど、反対していないから問題ないのでは?」
そう思って進めたくなる場面もあるかもしれません。
しかし、遺産分割協議は、相続人全員が内容を理解し、納得して合意することが前提です。
認知症などにより判断能力が不十分な方がいる場合、家族だけの判断で進めると、手続きが止まったり、あとから協議の有効性が問題になったりすることがあります。
この記事では、相続人が認知症の場合にどんな点に注意すべきか、成年後見制度が必要になるケース、家族だけで進める前に確認したいポイントについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。
1.「母が認知症だけど、家族で話せば大丈夫」と思っていませんか?
相続手続きでは、相続人全員で話し合って、誰がどの財産を受け取るかを決めることがあります。
これを遺産分割協議といいます。
ここで問題になりやすいのが、相続人の中に認知症の方がいるケースです。
たとえば、父が亡くなり、相続人が母と子どもたち。
ところが母が認知症で、預貯金や不動産の分け方について十分に理解して判断することが難しい。
このような場合、家族だけで話し合って、なんとなく書類に署名・押印してもらえばよい、というわけにはいきません。
相続は、思っている以上に慎重な手続きです。
2.問題は「本人の意思確認」ができるかどうかです
遺産分割協議は、相続人全員が内容を理解し、納得して合意することが前提です。
そのため、認知症によって判断能力が不十分な相続人がいる場合、その方が協議の内容を理解できているかが問題になります。
「家族だから代わりに決めてもいい」
「本人も反対していないから大丈夫」
と思いたくなる場面もあるかもしれません。
でも、相続ではそう簡単ではありません。
判断能力が不十分な方がした遺産分割協議は、あとで無効とされるリスクがあります。
また、金融機関や法務局の手続きでも、相続人全員の有効な合意が確認できなければ、手続きが進まないことがあります。
つまり、認知症の相続人がいる場合、手続きが途中で止まってしまうことがあるのです。
3.成年後見制度を使うことがあります
認知症などで判断能力が不十分な方がいる場合、家庭裁判所に申し立てて、成年後見人を選任してもらうことがあります。
成年後見人は、本人の代わりに財産管理や法律行為を行う人です。
遺産分割協議でも、本人の利益を守る立場で関与します。
ここで大切なのは、成年後見人は「家族の都合で財産を分ける人」ではないということです。
あくまで、認知症の本人にとって不利益にならないように考える立場です。
そのため、たとえば
「母には預金はいらないから、子どもたちで分けよう」
というような内容は、本人の利益を害する可能性があるため、簡単には進められません。
また、家庭裁判所に申し立てたからといって、希望した家族が必ず後見人に選ばれるとは限りません。大阪司法書士会のFAQでも、後見人等は親族がなることもありますが、誰を選ぶかは最終的に裁判所が判断すると説明されています。
4.後見人も相続人の場合は、さらに注意が必要です
よくあるのが、子どもの一人が母の成年後見人になっていて、その子ども自身も相続人であるケースです。
この場合、その子どもは「自分自身の相続人としての立場」と「母の代理人としての立場」の両方を持つことになります。
すると、利益がぶつかる可能性があります。
たとえば、遺産をどう分けるかによって、自分の取り分と母の取り分が変わるからです。
このような場合には、遺産分割協議について、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要が出てくることがあります。裁判所も、成年被後見人と後見人が共同相続人として遺産分割協議をする場合など、利益相反があるときは、後見人等に代わって裁判所が選任した別の人が本人を代理すると案内しています。
※裁判所サイトはこちら
ここは、一般の方が判断しにくい部分です。
「家族だから問題ない」と思って進めた内容が、実は手続き上問題になることもあります。
5.何から始めればよいか
相続人に認知症の方がいる場合、まず確認したいのは次の点です。
- 認知症の方の判断能力の程度
- 遺言書の有無
- 相続人が誰か
- 財産の内容
- 遺産分割協議が必要か
- 成年後見制度の利用が必要か
特に、遺言書があるかどうかは重要です。
遺言書の内容によっては、遺産分割協議をしなくても進められる場合があります。
反対に、遺言書がなく、相続人全員で分け方を決める必要がある場合は、認知症の相続人について慎重な対応が必要になります。
6.まとめ|認知症の相続人がいる場合は、早めの整理が大切です
認知症の相続人がいる相続は、通常の相続よりも手続きが複雑になりやすいです。
家族だけで何とかしようとしても、金融機関や法務局で手続きが止まったり、後から協議の有効性が問題になったりすることがあります。
大切なのは、
「本人は理解できているか」
「遺産分割協議が必要か」
「成年後見制度を使うべきか」
「利益相反がないか」
を早めに整理することです。
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