はじめに
「口約束でも契約になるんですか?」——契約に関するご相談の中で、もっとも多い質問のひとつです。
結論から言うと、口約束でも契約は成立します。しかし、そこには大きなリスクも潜んでいます。今回はその仕組みと注意点を、初心者向けに解説します。
口約束の契約が有効な理由
法律上、契約は 「当事者同士の意思表示の一致」 があれば成立します。
つまり、
- Aさん「この商品を1万円で売ります」
- Bさん「はい、買います」
 という合意があれば、契約は成立しているのです。
ポイント
- 書面がなくても契約は有効
- 日常生活の買い物はほとんどが「口約束の契約」
- 契約書は「契約を証拠化するためのもの」
口約束が危険な理由
口約束の最大の問題は 「証拠が残らない」 ことです。
例えば次のようなトラブルが起きやすくなります。
- 代金の金額を「5万円」と思っていたが、相手は「15万円」と主張してきた
- 「納期は来月」と思っていたが、相手は「再来月」と言っている
- 「修理代金込み」と思っていたが、相手は「別料金」と請求してきた
→ 双方の記憶や認識が食い違ったとき、証拠がなければ裁判でも立証が困難です。
口約束のリスクを減らす方法
口約束そのものを避けることが理想ですが、現実には全ての取引を契約書化するのは難しい場合もあります。そんなときは、以下の方法でリスクを減らせます。
- メールやLINEでやりとりを残す
 「○月○日までに○○を1万円で購入することで合意しました」など。
- 領収書や請求書を受け取る
 金銭のやりとりを証拠化できる。
- 簡単なメモに署名してもらう
 正式な契約書でなくても、双方の署名があれば証拠性が高まる。
行政書士からのアドバイス
行政書士としてご相談を受ける中で、口約束が原因のトラブルは少なくありません。
「言った・言わない」の水掛け論になり、解決までに時間も費用もかかってしまいます。
- 少額でも契約書を作る
- 契約書が難しい場合は、メールやメモで記録を残す
この2点を意識するだけでも、トラブル防止につながります。
口約束が原因でトラブルになってしまいそうな場合は、お知り合いの弁護士や、
「日本司法支援センター 法テラス」へご相談いただくとよいかと思います。
まとめ
・契約は口約束でも成立する
・しかし、証拠が残らないためトラブルの温床になりやすい
・書面化・記録化することで安心できる契約関係を築ける
次回予告
「契約とは?初心者にもわかる契約の基本と日常生活での具体例」はこちら
「第2回 契約の成立要件——有効な契約と無効な契約の境目」はこちら
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次回は 「契約自由の原則とは?制限されるケースと公序良俗との関係」 をテーマに、
「なぜ契約は自由なのに、無効になる場合があるのか?」を解説します。
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