はじめに
契約書を作成しようとすると、まず戸惑うのがその「構成」です。
冒頭に前文があり、続いて多数の条項、そして最後に署名欄——。
一見、形式的に見える部分にもすべて法律的な意味と役割があります。
今回は、契約書を構成する「4つの基本パート」をわかりやすく解説します。
契約書の基本構成(全体像)
一般的な契約書は、以下のような構成になっています。
- 前文(ぜんぶん)
- 本文(ほんぶん)=条項部分
- 末文(まつぶん)
- 署名・押印欄(署名欄)
それぞれの部分には、異なる目的と法的な意味があります。
前文の役割
前文は契約書の「顔」にあたる部分です。
契約の目的・背景・当事者を簡潔に示し、本文で登場する内容の前提を説明します。
例:
株式会社〇〇(以下「甲」という。)と、株式会社△△(以下「乙」という。)は、〇〇に関する業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結するにあたり、次のとおり契約を締結する。
ポイント
- 契約当事者を明示(氏名・会社名)
- 契約の目的を簡潔に説明
- 略称(甲・乙)を定義⇒ 後の条項で「甲」「乙」と使えるようになるため、前文で必ず定義します。
本文(条項部分)の構成
契約書の中心となる部分です。
本文は、契約内容・義務・権利・責任・手続きなどを条項として整理します。
代表的な条項例:
- (目的)
- (業務内容)
- (契約期間)
- (報酬および支払方法)
- (秘密保持)
- (契約の解除)
- (損害賠償)
- (合意管轄)
ポイント
- 1条=1テーマに絞る
- 内容はできるだけ明確に(あいまいな言葉は避ける)
- 項番号を付けて読みやすく
条項の並び順には意味があり、目的→義務→支払→期間→責任→紛争処理、という流れが一般的です。
末文の役割
本文のあとに置かれる「末文」は、契約の締結を締めくくる部分です。
ここでは、契約の成立日・部数・保管方法などを記載します。
例:
本契約書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有するものとする。
令和〇年〇月〇日
ポイント
- 契約成立日を明示する⇒ この日付が「契約成立日」として扱われるため、非常に重要です
- 契約書の作成部数を明記する
- 誰が保管するかを明確にする
署名・押印欄
契約の最後に設ける「署名欄」は、当事者の意思を明確に示す部分です。
例:
(甲)東京都立川市〇〇町1丁目
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 印
(乙)東京都八王子市△△町2丁目
株式会社△△
代表取締役 △△△△ 印
ポイント
- 実印・社印を使用するのが原則
- 電子契約の場合は電子署名・タイムスタンプで代替可
- 押印位置・配置も統一感をもって整える
まとめ
・契約書は「前文・本文・末文・署名欄」の4構成で成り立つ
・各パートに法的意味があり、省略や順序の乱れはトラブルのもと
・構成を理解すれば、契約書チェック力も格段に向上
・万が一、契約書トラブルに発展しそうな場合は、お知り合いの弁護士や、
「日本司法支援センター 法テラス」へ相談しましょう。
次回予告
契約書作成に関するこれまでの記事はこちらをご覧ください。
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次回は 「契約当事者の表示方法と署名押印のルール|電子契約との違い」 をテーマに、契約書に記載する「名前・住所・印鑑」の正しい書き方を詳しく紹介します。
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