はじめに
相続人が未成年だったり、認知症で判断能力がなかったり、海外に住んでいる場合——
通常の相続手続きでは対応が難しく、特別な配慮や制度の活用が必要になります。今回は、こうしたケースにおける対応方法と注意点を、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
未成年の相続人がいる場合の対応
未成年の相続人がいる場合の対応未成年者は法律行為(遺産分割協議など)を単独で行うことができません。
そのため、以下のような対応が必要です:
親権者が代理する場合
・親権者が他の相続人と利害関係がない場合は、親が代理人として署名可能
特別代理人の選任が必要な場合
・親権者が他の相続人でもある場合(利害関係がある)
→ 家庭裁判所に「特別代理人選任申立て」が必要
・申立てには、申立書・戸籍・協議書案などを提出
・審理期間は通常2〜4週間程度
認知症など判断能力がない相続人がいる場合
判断能力がない相続人は、遺産分割協議に参加できません。
対応方法は以下の通り:
成年後見制度の活用
- 家庭裁判所に「後見開始の申立て」を行い、後見人を選任
- 後見人が相続人の代理として協議に参加
- 医師の診断書や財産目録などが必要
- 審理期間は1〜2か月程度が目安
- 成年後見制度については詳しくは厚労省のサイトをご覧ください。
海外在住の相続人がいる場合
書類のやり取りと署名
- 遺産分割協議書を郵送し、署名・実印押印(または現地の公証)を依頼
- 印鑑証明書が取得できない場合は、現地の公証人による署名証明書を添付
翻訳・認証の対応
- 英語・ネパール語などで署名された書類は、日本語訳+翻訳者の署名が必要
- 公証人による認証(アポスティーユ)を求められる場合もある
- 国によっては領事館での認証が必要(例:ネパール、フィリピンなど)
行政書士の支援ポイント
| ケース | 行政書士ができること | 他士業との連携 |
| 未成年 | 特別代理人申立書の作成支援 | 家庭裁判所との連携 |
| 認知症 | 後見申立書類の整備 | 司法書士・弁護士との連携 |
| 海外在住 | 翻訳文書の作成・署名支援 | 公証人・領事館との連携 |
まとめ
- 相続人が未成年・認知症・海外在住の場合は、通常の手続きができないため、制度の活用が必要
- 特別代理人・後見人・翻訳・公証など、家庭裁判所や外部機関との連携が不可欠
- 行政書士は、書類作成・翻訳・制度案内などで実務を支援し、他士業との連携で円滑な手続きをサポートできる
次回予告
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