はじめに
「家族以外に財産を残したい」「お世話になった友人に渡したい」「社会貢献として団体に寄付したい」——そんな希望を叶える方法が「遺贈」です。
遺贈は遺言によって相続人以外に財産を譲る制度ですが、対象者の特定や遺留分への配慮など、注意すべき点が多くあります。今回は、実際の事例を交えながら遺贈の仕組みと注意点を解説します。
目次
遺贈とは?
遺贈とは、遺言によって相続人以外の人や団体に財産を譲ることをいいます。
例えば、親族ではない友人、地域のNPO法人、母校の大学、宗教法人などが対象になります。
相続人に対しては「相続」、それ以外は「遺贈」と呼び分けられます。
相続と遺贈について、よりさらっとお知りになりたい方は、以前、noteで記事にした、「Q:相続と遺贈の違いがよくわかりません。」をご覧ください。
遺贈の対象と事例
友人への遺贈
70代男性が「長年お世話になった友人に預金の一部を渡したい」と考え、自筆証書遺言を作成しました。
しかし、遺言書に「友人の名前」しか書かれておらず、住所や生年月日が不明確だったため、手続きが進まずトラブルに。
→ 遺贈先は氏名・住所を正確に記載することが重要です。
団体への遺贈
ある女性が「地元の動物保護団体に寄付したい」と遺言を作成しました。ところが、その団体は法人格を持たず、受け取りができませんでした。
→ 団体の法人格や受け入れ体制を事前に確認する必要があります。
宗教法人への遺贈
信仰している寺院に土地を寄付したいと考えたケース。寺院が宗教法人として登記されていたため、スムーズに受け入れが可能でした。
→ 法人格があるかどうかで手続きの可否が変わります。
遺留分とは?遺贈との関係
遺留分とは、法律で保障された「最低限の取り分」のことです。
配偶者や子どもなど一定の相続人には、遺言で財産をすべて他人に渡すと書かれていても、法律上「遺留分」を請求する権利があります。
事例:
ある男性が「全財産を地元のNPO法人に寄付する」と遺言を残しました。ところが、子どもが「生活が困る」として遺留分侵害額請求(最低限の取り分が〇〇円持っていかれてますよ、返してください。という請求)を行い、寄付額が減額されました。
→ 遺留分を無視した遺贈は、後に相続人から請求されて修正される可能性があります。
ポイント:
- 遺留分は、配偶者や子どもに認められる最低限の権利
- 遺贈を考える際は、遺留分を侵害しないように配慮することが重要
- 行政書士や税理士に相談し、遺留分を考慮した遺言文案を作成することでトラブルを防止できます→トラブルが発生しそうなときは、お近くの弁護士、または法テラスにご相談を。
実務上の注意点
- 対象者の特定
氏名・住所・法人格を正確に記載しないと、遺贈が実行できないことがあります。 - 遺留分への配慮
遺贈によって相続人の取り分が減る場合、相続人が「遺留分侵害額請求」を行う可能性があります。
例:全財産を団体に寄付すると書いた場合、子どもが遺留分を請求し、遺贈額が減額されることも。 - 執行者の指定
遺贈は相続人の同意がなくても執行者が実行できます。信頼できる執行者を指定しておくことが重要です。
行政書士の支援ポイント
- 遺言文案作成時に、遺贈対象者の特定をサポート
- 団体への寄付の場合、法人格や受け入れ体制の確認を支援
- 遺留分に配慮した文案を提案し、トラブル防止に寄与
- 公証人・弁護士と連携して、遺贈の実行を確実に進める
まとめ
- 遺贈は、相続人以外に財産を残す方法で、友人や団体への寄付も可能
- 対象者の特定や法人格の確認が不可欠
- 遺留分は相続人に保障された最低限の取り分であり、遺贈を考える際に必ず配慮が必要
- 行政書士は、文案作成・対象確認・制度案内で実務をサポート可能
次回予告
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次回は「相続と生命保険の関係|受取人指定と税務上の注意点」を解説します。生命保険金の扱いと相続税の関係をわかりやすく紹介します。
