はじめに
契約書の中でも最も身近で基本的なものが「売買契約書」です。
不動産や車、パソコンのような高額商品だけでなく、日常の買い物も実は売買契約の一種。
行政書士としても作成やチェックの機会が多い、重要な契約書です。
今回は、売買契約書の基本構造と、作成時の注意点を、個人間で高級ブランドのバッグを売買するケースを想定して、解説していきます。
目次
売買契約の基本
バッグの個人売買も、法律上は通常の「売買契約」(民法555条→e-GOV法令検索)です。
つまり、売主がバッグを引き渡し、買主が代金を支払うことで成立します。
売主の義務:本物のバッグを、約束の状態で引き渡す
買主の義務:代金を、約束の期日までに支払う
書面がなくても口頭で成立しますが、トラブル防止のために契約書または売買記録を残すことが不可欠です。
契約書に盛り込むべき主な条項
目的物(バッグ)の特定
ブランドバッグは、モデルや状態の違いで価値が大きく変わります。
契約書では、どのバッグを、どんな状態で引き渡すかを明確に記載しましょう。
記載例:
シャネル マトラッセ25 チェーンショルダーバッグ(ラムスキン・ブラック・ゴールド金具)
シリアルナンバー:21XXXXXX
付属品:ギャランティカード、保存袋、箱あり
状態:角スレ小、金具微細キズあり
ポイント:
- ブランド・モデル・素材・カラー・サイズを具体的に
- シリアル番号(タグや内側シール)を記載
- 付属品(箱・袋・カード)を明示
- 状態は「良い」「やや傷あり」など主観でなく、具体的な傷・汚れ位置を
→取引前に、写真を複数枚添付して契約書に添付しておくとさらに安心です。
売買代金・支払い条件
金額・支払い方法・期日を具体的に記載します。
例文:
売買代金は金180,000円(税込)とし、買主は令和7年1月15日までに、売主指定の銀行口座へ振込送金して支払うものとする。
ポイント:
- 「税込/税抜」明記(個人取引でも明確に)
- 支払い期日を定め、遅延時の扱い(契約解除など)を決める
- 手渡しの場合は「その場で全額支払う」と記載
引渡方法と時期
発送方法・期日・責任の所在を明確にしておきましょう。
例文:
売主は、代金の全額入金確認後、令和7年1月16日までに、宅急便(補償付き・追跡番号あり)にて買主指定の住所へ発送するものとする。
ポイント:
- 入金確認後に発送(先送りは危険)
- 追跡・補償付き配送を指定(例:ヤマト宅急便、ゆうパック)
- 梱包状態・発送日を写真で記録
真贋保証(偽物防止)
中古ブランド品の取引では、偽物(コピー品)問題が最も大きなリスクです。
例文:
売主は、本件バッグが真正品であることを保証する。万一、鑑定機関(例:ブランド専門鑑定士、ブランドオフ、ブランディア等)により偽物と判明した場合、売主は代金全額を返還するものとする。
ポイント:
- 「真正品であることを保証」明記
- 鑑定先の名称を具体的に示す
- 偽物だった場合の返金・返送方法を明確に
状態保証・返品条件
中古品は「思っていたより傷が多い」「臭いがする」など、感覚の違いによるトラブルが多発します。
例文:
売主は、買主に対し、本件バッグが引渡時点で上記記載の状態にあることを保証する。ただし、引渡後7日以内に買主から異議の申し出がない場合は、以後、返品・返金には応じないものとする。
ポイント:
- 状態保証期間(例:7日以内)を限定
- 感覚的な不満ではなく、「明らかな説明不足」「重大な欠陥」のみ返品対象
- 「ノークレーム・ノーリターン」とする場合はその旨を明記
契約解除
支払いがない、虚偽申告があった場合などに備え、解除条件を設定します。
例文:
買主が支払期日までに代金を支払わない場合、売主は本契約を解除できる。
また、本件バッグが偽物と判明した場合、買主は契約を解除し、売主に代金返還を請求できる。
その他の条項
- 損害賠償条項(解除・紛争時の費用負担)
- 管轄裁判所条項(例:東京地方裁判所)
- 記録保存条項(LINE・メール等のやり取りを契約書の一部として扱う旨)
実際のトラブル事例と防止策
| トラブル内容 | 原因 | 防止策 |
| 偽物だった | 真贋保証なし | 真贋保証条項+鑑定書写し添付 |
| 「傷が多い」とクレーム | 状態の記載が曖昧 | 写真・説明文を契約書に添付 |
| 支払い遅延 | 期日設定なし | 期日・解除条項を明記 |
| 配送中の破損 | 梱包不十分・追跡なし | 補償付き配送・梱包写真を保存 |
行政書士からのアドバイス
ブランドバッグの個人取引は、「信頼関係に頼りすぎる」ことが一番のリスクです。
特にSNSやフリマアプリを介したやり取りでは、相手の身元が不明なことも多く、書面化することで安心感と抑止効果が得られます。
行政書士としては、次の点をおすすめします:
- バッグの写真を契約書に添付
- 支払い証拠(振込記録)を保存
- 真贋保証・返品条件を必ず明記
- 契約内容をPDF化して双方が保存
まとめ
・個人間のブランドバッグ取引も「売買契約」にあたる
・バッグの詳細(型番・付属品・状態)を明記する
・真贋保証・状態保証でトラブルを予防
・書面で残すことで、安心して取引ができる
次回予告
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次回は 「賃貸借契約書のキホン16項目を解説」 をテーマに、
不動産や機器などを貸し借りする契約の基本構造を解説します。
