はじめに
相続放棄は「借金を引き継がないための制度」として広く知られていますが、実際には放棄後にも多くの手続きや生活上の調整が必要になります。
特に、故人と同居していた場合や、生活費を故人に依存していた場合は、放棄後の生活設計が重要です。今回は、相続放棄後に必要な実務と注意点を、事例を交えて解説します。
相続放棄の家庭裁判所への具体的な申述方法は、裁判所のサイトをご覧ください。
目次
相続放棄後にできること・できないこと
相続放棄をすると、法律上「最初から相続人ではなかった」扱いになります。
そのため、できること・できないことが明確に分かれます。
■ できないこと:故人の財産に手を触れる
相続放棄をした人は、故人の財産を処分したり、家財を持ち出したりすることはできません。
事例:
父の借金が多く、子どもが相続放棄をしたケース。
放棄後に父の家財を「片付けのつもり」で処分してしまい、家庭裁判所から「相続財産の処分=単純承認」と判断され、結果的に借金を背負うことになってしまいました。
→ 相続放棄後は、故人の財産に触れる行為は厳禁です。
■ できること:身分上の行為
葬儀の手配や役所への死亡届など、身分上の行為は相続放棄後でも問題ありません。
相続放棄後の生活設計
相続放棄は借金を回避する手段ですが、生活面では新たな課題が生じることがあります。
■ 同居していた場合の住まいの問題
故人名義の家に住んでいた場合、放棄後はその家に住み続けられない可能性があります。
事例:
母子家庭で父が死亡。父名義の賃貸住宅に住んでいたため、相続放棄後に賃貸契約の名義変更が必要になりました。
→ 放棄後は「契約者変更」や「新規契約」が必要になることがあります。
■ 生活費の確保
相続放棄をしても、遺族年金や児童扶養手当などの公的支援は受けられます。
相続放棄と生命保険に関してはこちらの記事をご覧ください。
事例:
父が死亡し、借金のため相続放棄。しかし遺族年金の受給により、生活が安定したケース。
→ 相続放棄と公的支援は別制度のため、放棄しても受給可能です。
■ 子どもの教育費
相続放棄をしても、学資保険や教育資金贈与信託などは契約内容によって継続できる場合があります。
→ 契約内容の確認が重要です。
相続放棄後に必要な手続き
放棄後は、生活に関わる名義変更や契約変更を進める必要があります。
■ 名義変更が必要なもの
- 電気・ガス・水道
- 携帯電話・インターネット
- 賃貸契約
- 健康保険・年金
- 銀行口座の解約(故人名義)
事例:
故人名義の電気契約を放置していたため、未払い扱いとなり、家族が利用停止に。
→ 放棄後も「生活に必要な契約」は早めに名義変更することが大切です。
注意点
相続放棄後は、以下の点に特に注意が必要です。
■ 家財の処分は「単純承認」扱いになる可能性
放棄後に故人の財産を処分すると、相続を承認したとみなされることがあります。
■ 故人の車や不動産を勝手に使うのもNG
「使っただけ」でも財産の処分と判断されることがあります。
■ 相続放棄は原則3か月以内
ただし、財産調査に時間がかかる場合は延長が認められることもあります。
相続放棄の方法と期限についてはこちらの記事をご覧ください。
■ 家族全員が放棄しないと借金が移る可能性
長男が放棄しても、次男や配偶者に借金が移ることがあります。
→ 家族全員で協議することが重要です。
行政書士の支援ポイント
- 相続放棄申立書の作成支援
- 放棄後の行政手続きの整理
- 家財処分や住まいの扱いに関するアドバイス
- 税理士・弁護士との連携で、借金問題や税務問題にも対応
まとめ
- 相続放棄は借金回避の有効な手段だが、放棄後の生活設計が重要
- 故人の財産を勝手に処分すると「単純承認」扱いになるため注意
- 名義変更や行政手続きを早めに行うことでトラブルを防止
- 行政書士は放棄手続きから生活設計まで幅広くサポート可能
次回予告
弊所の相続のお手続きに関してはこちらをご覧ください。
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次回は「相続財産の調査方法|預金・不動産・保険の調べ方と注意点」を解説します。
相続放棄や遺産分割の前に必要な“財産の洗い出し”をわかりやすく紹介します。
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